造園シンポジウム

9月16~17日に新潟県で開催された造園シンポジウム

に参加してきました。

 

テーマ「いま、観光資源としての日本庭園を考える」

 

この講演会では

「価値ある古庭園を今どう活かし、観光資源とするのか」

 というような内容でした。

 

そこで今回のブログは

「古庭園から学んだこと」をテーマに綴りたいと思います!

 

 

現在、群馬県邑楽郡で庭屋をやっておりますが、

生れは栃木県足利市です。

足利は庭園文化の残る地域で、私の故郷ということもあり、

足利の庭にも少し関わらせていただきました。

 

足利市では、歴史文化基本構想を策定するにあたり、

平成2012月~223月にかけて庭園調査が行われ、

私もその一員として、何度か調査に参加しました。

 

そこで、

 「古庭園の素晴らしさ・魅力に触れ、これをどう自分の仕事に活かすか

 という点に着目して、

私が作庭した庭をいくつか紹介させていただきます。

 

まず、こちらは足利市の古庭園調査をした時の写真です。


こちらの写真では分かりにくいですが、山の斜面が

チャートの岩盤で、そこにクロボクを据えて

築山の様な景色をつくっています。

 

足利市では、このように斜面を活用した庭園がいくつか見られます。

 

また、大正時代~昭和にかけてクロボクの築山が流行します。

そして、戦後のクロボクの築山は、高さはありますが、

奥行きをそれほど必要としない築き方で、

一般住宅の狭い場所にも作られていました。

 

 

これを参考に作った庭がこちらです。

 

上写真が施工前

 

この一般的な住居を改装して店舗にするということで

この階段部分に庭を造ってほしいとの依頼でした。

 

下写真が施工後、最近の写真です。

 

山の斜面をつくるようなイメージで、クロボク石の代わりに

大谷石の割肌を使いました。

 

「隠れ家のようにしてほしい」との依頼だったので、

岩間の中に店があるようなイメージで、

木のトンネルをつくり、

お客様がワクワクしてお店に入れるような演出をしました。

 

これは階段上から下を見たところですが、

この岩間が滝になっており、

心地いい音でお客様をお出迎えできるようになっています。

 

 

続いて、こちらは店内から庭を見たところです。

 

このように流れとなっていて、店の外とは対照的に、

店内からは苔庭でゆったりと眺めながら

お食事をして頂いております。

 

 

続いて、

こちらは史跡樺崎寺跡庭園の園池が復原された写真です。

私も何度か州浜の復原工事に

作業員として携わらせていただきました。

この園池は鎌倉期からはじまり第4期の変遷が確認されていて、

こちらの写真は、

3期の南北朝から室町期の復原整備とのことです。

 

 

これを参考にして作ったのが、こちらです。


この史跡樺崎寺跡庭園からほど近い所にある私の実家です。

 

庭をつくることになり、地産地消・地域性の考えと

史跡樺崎寺跡庭園の影響を受けてこの庭をつくりました。

石のテラス横は水が流れるようになっていて、

その水が池に溜まる様になっています。

 

州浜の施工は史跡樺崎寺跡庭園の復原工事で学んだことが

大変勉強になりました。

 

水の流れる音と動きが楽しめる心地いい庭です。

 

 

続いてはこちらです。

芝の築山

 

古庭園では池を景色として見せる庭では、池を深く見せたり、

背景として山水の景が築かれていることがあります。

 

これは、車の無い時代、池を造成した時に出た土を

景色として使うとても合理的な方法です。

 

こちらの庭は、

山水の景をつくったということではないのですが、

この芝の築山の隣に、地面を階段一段分低くした

テラスと枯池をつくり、

そこで出た土を使い築山としました。

一段低いテラスからみた築山は美しいです。

 

築山の土留めは、地層の様にも見える版築土塀としました。

下の写真は奈良の法隆寺ですが、

門袖に版築土塀が使われています。

版築土塀は奈良の法隆寺以外にも京都の龍安寺でも有名です。

 

 

この版築土塀を円形にし、

その上に鉄板で編んで芝の土留めとしています。

今回のブログは、古庭園にちなんで、

古庭園から学び、今の住宅に合わせて応用した例を

挙げさせていただきました。

 

 

最後にこの造園シンポジウムに参加し、

先生方のお話を聞いて大切だと思ったことは、

「少しでも多くの方に、日本庭園の魅力を感じてもらうこと」

だと思いました。

 

私は、先人の知恵や技術、感性、つくる思いに、

感銘を受けることが多いです。

それが古庭園の魅力の一つと感じています。

 

そして、

そんな魅力ある日本庭園を少しでも発信できればと思い、

今回「故郷の庭」を挙げて紹介させて頂きました。

 

長文にもかかわらず、最後まで読んでいただきありがとうございました。

お彼岸を迎え朝晩冷えてきました。

皆様お体にはご留意ください。